DX支援 システム開発 コンサルティング ブログ お問い合わせ
DX・デジタル化事例
コラム連載 第2回

【システム開発視点】標準型電子カルテとは何か
——HL7 FHIR・API連携・クラウド型SaaSを歯科向けに整理する

医療DXの文脈で「標準型電子カルテ」という言葉を見かける機会が増えました。システム開発の視点で見ると、これは単なる新製品の話ではありません。データ構造、接続方式、クラウド運用、外部サービス連携まで含めた、医療情報システムの設計思想そのものが変わり始めていると見る方が実態に近いです。

特に歯科業界では、まだ詳細仕様が固まっていないからこそ、いま重要なのは「何が確定していて、何が今後決まるのか」を整理することです。第2回では、標準型電子カルテをシステム設計の視点から整理し、歯科向けの開発や導入支援で何を見ておくべきかをまとめます。

この記事のポイント

  • 標準型電子カルテの設計思想
  • なぜクラウド型SaaSが前提になっているのか
  • HL7 FHIRとAPI連携がなぜ重要なのか
  • 歯科システム開発で今から意識すべき論点

標準型電子カルテは「全部入り」ではなく「つながる前提」の設計

厚生労働省の議事録や資料を見ると、標準型電子カルテは、標準規格に準拠したクラウドベースで、基本機能は必要最小限とし、API連携によって民間事業者のオプション機能と組み合わせる考え方が示されています。

ここで重要なのは、従来のように一つの電子カルテの中で全機能を囲い込む発想ではないことです。標準型電子カルテは、医療DXの基盤とつながり、さらに民間サービスとも接続しやすい構成を目指しています。つまり、主役は単体機能の豊富さではなく、連携しやすいアーキテクチャです。

設計の読み方

システム開発の目線では、標準型電子カルテは「必要最小限のコア」と「API経由で拡張される周辺機能」に分けて考えるモデルに近いです。これは、将来的な機能追加や外部サービス接続を前提にしやすい設計です。

なぜクラウド型SaaSが前提になっているのか

標準型電子カルテは、クラウドベースでの運用が前提とされています。背景には、オンプレミス型の院内サーバー運用が持つ保守負担、更新負担、障害対応負担、導入コストの重さがあります。

クラウド型SaaSに寄せることで、インフラ管理をできるだけ標準化し、スケールしやすくし、個別医療機関ごとの運用負荷を下げる狙いがあります。加えて、ガバメントクラウドの考え方では、迅速、柔軟、セキュアでコスト効率の高いシステム構築が重視されています。

これは単なるホスティング先の変更ではありません。運用監視、可用性、スケーラビリティ、設定の標準化、コストの透明化まで含めて、システム全体の持ち方を変える話です。

HL7 FHIRは、なぜそんなに重要なのか

HL7 FHIRは、医療情報を標準化してやり取りするための国際的な技術仕様です。システム開発においては、異なるベンダー、異なるプロダクト、異なる業務モジュールの間で、医療情報を受け渡ししやすくするための共通言語に近い役割を持ちます。

医療DXの文脈でFHIRが重要なのは、電子カルテ情報共有サービスでこの標準が採用されていることに加え、今後の標準型電子カルテや関連サービスが、この接続性を前提に設計されていくからです。

歯科向けでは未確定の部分もありますが、今後の開発で独自データ構造に依存しすぎると、後から連携対応の負担が大きくなりやすくなります。将来の歯科仕様が固まる前でも、「標準化に寄せやすい設計」を意識しておく価値は大きいです。

API連携前提の設計に変わると、何が変わるのか

API連携を前提にすると、カルテ本体、予約、問診、画像管理、口腔内写真、会計、補綴関連システム、外部レポート、患者向けアプリなどを、従来よりも分離して考えやすくなります。

一方で、単にAPIがあるだけでは不十分です。認証、権限、監査ログ、データ整合性、エラー時の責任分界、運用フローまで含めて設計しなければ、実装しただけで現場が混乱することもあります。

API連携で見落としやすい点

  • 項目名がつながっても、業務の意味がそろっていない
  • 画像や添付ファイルの扱いが曖昧なまま進む
  • バージョン差異や更新時の影響管理ができていない
  • ログや監査証跡を後付けで考えてしまう
  • 障害時の切り分けが複数ベンダーにまたがる

歯科システム開発で今から意識したいこと

歯科は医科と比べて、口腔内写真、補綴、技工連携、歯式表現、自由記載、画像管理など、業務上の特徴が強い分野です。そのため、医科の考え方をそのまま移植するだけでは対応しきれない部分があります。

ただし、それは標準化と相性が悪いという意味ではありません。むしろ、歯科特有の業務をどこまで構造化し、どこを拡張領域として分け、どこを標準データとして扱うかを整理することが、これからの開発では重要になります。

つまり今必要なのは、「歯科はまだ決まっていないから待つ」ことではなく、「歯科が決まった時にすぐ乗れる設計にしておく」ことです。これはシステム開発会社にも、導入支援会社にも共通する視点です。

F-Labelのような開発・実装側が担えること

標準型電子カルテの時代に求められるのは、単に業務システムを作ることではありません。制度の方向性を理解しながら、現場に合ったデータ設計、API連携、クラウド運用、段階移行を現実的に設計することです。

歯科医院ごとに、紙カルテ、既存ベンダー運用、クラウド移行検討、新規開業など状況は異なります。そのため、最適解は一つではありません。だからこそ、現状を棚卸しし、今すぐ必要なことと、将来のために残しておくべき設計余地を分けて考えることが重要です。

まとめ

標準型電子カルテは、単体の電子カルテ製品ではなく、クラウド型SaaS、標準API、HL7 FHIR、外部サービス連携を前提にした医療情報基盤の考え方です。システム開発の観点では、ここから先は「機能を作る」だけでなく、「どうつながる設計にするか」がより重要になります。

歯科の詳細仕様はこれから決まっていく段階ですが、その前にできる準備は少なくありません。次回は、歯科医院は今すぐ入れ替えるべきかというテーマで、紙カルテ、オンプレ、クラウドをどう見極めるかを整理します。

参照・引用

厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001511375.pdf

厚生労働省「第2回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ議事録」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39442.html

厚生労働省「第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ議事録」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49537.html

厚生労働省「医療DXについて」

https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html

デジタル庁「ガバメントクラウド」

https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud

免責事項

本記事は、公開日時点で確認できる厚生労働省、デジタル庁の公表資料および提供資料をもとに、システム開発と導入設計の観点から整理したものです。歯科特有の機能要件、FHIR対応の詳細仕様、各ベンダーの実装方針、補助制度等は今後変更または具体化される可能性があります。個別の開発判断、導入判断、ベンダー選定にあたっては、必ず最新の公式資料と正式仕様をご確認ください。

歯科の医療DX・システム設計についてご相談ください

データ構造、API連携、クラウド移行設計まで、
F Labelが現場に合った実装設計を一緒に考えます。

無料相談はこちら DX支援を見る
ブログ一覧に戻る