F-Labelコラム

標準型電子カルテは「入れるかどうか」ではなく「どう備えるか」の段階へ

F-Label目線で読む、政府主導の医療DXと電子カルテ標準化の本質

電子カルテの話は、これまで各医療機関が「どのベンダーを選ぶか」「今の運用にどこまで合わせられるか」という個別最適のテーマとして扱われがちでした。ですが、いま政府が進めているのは、単なる電子カルテの普及ではありません。全国医療情報プラットフォームにつながることを前提に、医療情報を標準化し、必要な情報を共有できる医療基盤へ変えていくことです。ここで中核になるのが、電子カルテ情報共有サービスと、それに対応しやすい標準型電子カルテです。

政府の工程表では、遅くとも2030年には概ねすべての医療機関で必要な患者情報を共有できる電子カルテの導入を目指すとされています。さらに厚生労働省の2026年3月資料では、2026年夏までに電子カルテと電子カルテ情報共有サービスの具体的な普及計画を策定予定、そして標準型電子カルテ(導入版)は2026年度中の完成を目指すと整理されています。つまり、2026年は「様子見」で済ませる年ではなく、次の更改や導入判断に向けて設計を始める年になっています。

電子カルテ選定の時代から、情報連携設計の時代へ

F-Labelの視点で見ると、この流れは「電子カルテを新しくするかどうか」の話ではありません。今後の診療所経営・病院経営で、情報連携に耐えるシステム構成をどうつくるかという話です。従来のように、院内の使いやすさだけを優先して個別カスタマイズを積み重ねたオンプレ型電子カルテを維持していく発想は、国の目指す方向とはズレやすくなっています。

実際、厚労省資料でも、カスタマイズされたオンプレ型から、クラウドネイティブで廉価な仕組みへの移行を図る方針が明示されています。これは、医療機関ごとに閉じた運用から、将来的な標準化・連携・継続的な制度対応を前提とした構成へ移ることを意味します。

電子カルテ導入の論点は、「画面が使いやすいか」だけではありません。今後は「標準仕様にどう接続できるか」が、導入・更改判断の中心になります。

標準型電子カルテとは何か

現時点で確認できる公的情報からいえば、標準型電子カルテとは、政府・学会・ベンダーが協議して作る標準仕様に準拠し、電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋などの政府の医療DXサービスに対応できる電子カルテの類型として整理されています。

2026年3月のワーキングでは、厚生労働省が標準仕様に準拠した電子カルテを「標準型電子カルテ」として認証する方向も示されています。つまり、標準型電子カルテは単なる“安価な電子カルテ”ではなく、国の医療DX基盤につながることを前提にした標準準拠の電子カルテです。

電子カルテ情報共有サービスが変える実務

この標準化で重要なのが、電子カルテ情報共有サービスです。厚生労働省によれば、このサービスは全国医療情報プラットフォームの一つで、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有する仕組みです。

共有対象としては、3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)と、6情報(傷病名、アレルギー、薬剤禁忌、感染症、検査結果、処方)が中核になります。こうした情報が標準化されることで、紹介・逆紹介、転院、救急、継続診療の質と効率に大きく関わります。

共有の中核となる情報

  • 診療情報提供書
  • 退院時サマリー
  • 健診結果報告書
  • 傷病名
  • アレルギー
  • 薬剤禁忌
  • 感染症
  • 検査結果
  • 処方情報

HL7 FHIR対応は、今後の重要キーワード

情報交換の技術面ではHL7 FHIRが極めて重要です。PMDAの資料でも、電子カルテ情報共有サービスにおける電子カルテからのデータ送信は、医療情報交換標準規格であるHL7 FHIRに準拠して行うことが示されています。

そのため、今後のSEOや情報発信でも、「標準型電子カルテ」「HL7 FHIR」「電子カルテ情報共有サービス」「医療DX」「クラウド型電子カルテ」「電子処方箋」といったキーワードは別々ではなく、ひとつの流れとして捉える必要があります。現場でも、製品比較だけでなく、標準規格にどのように追随できるかが問われます。

F-Labelが重視するのは、導入設計・移行設計・運用設計

F-Labelとして特に強調したいのは、ここで問われるのはシステムそのもの以上に、導入設計・移行設計・運用設計だという点です。たとえば、いま紙カルテまたは未導入の診療所にとっては、標準型電子カルテは導入ハードルを下げる選択肢になり得ます。

一方で、すでに電子カルテを導入済みの医療機関では、次の更改時に電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋に対応できるか、既存ベンダーがどこまで標準仕様に追随するか、レセコン・PACS・検査連携・紹介状運用まで含めて整理できているかが実務上の分かれ目になります。

厚労省も、導入済み医療機関には次回更改時の対応を、未導入機関には標準化された電子カルテ導入を進める方向を示しています。つまり、電子カルテ標準化への対応は「そのうち考えること」ではなく、次の更新計画に織り込むべきテーマです。

病院・歯科医院はどう捉えるべきか

政府資料では、現在開発中の標準型電子カルテは医科無床診療所向けが中心です。ここは誤解しやすい点ですが、病院向けや歯科向けが同じスケジュール・同じ仕様で一気に進むと決まっているわけではありません

実際、厚労省資料では、歯科医療機関については2025年度から必要機能の検討を始め、2026年度中に具体的対応方針を決定するとされています。したがって、病院や歯科医院では、現時点で「標準型電子カルテにすぐ統一される」と理解するより、国の標準化方針にどう接続するかを先に設計することが現実的です。

これからの電子カルテ導入で確認すべきこと

導入・更改時に確認したいポイント

  • 院内運用をどこまで標準化できるか
  • 紹介状、退院時サマリー、検査結果、処方などの情報をどう構造化するか
  • クラウド利用、セキュリティ、権限管理、ログ管理をどう整理するか
  • 今後の制度改定や情報共有基盤の拡張に追随しやすい構成にしておくか

政府の方向性が「標準仕様に即した低価格のクラウド型電子カルテの普及促進」である以上、これからの電子カルテ導入支援は、単なるIT導入ではなく、医療DXに対応した業務設計支援であるべきです。

F-Label目線でいうと、標準型電子カルテ時代に必要なのは、派手なDXではありません。むしろ、現場の運用を壊さず、将来の標準化に乗り遅れない“地に足のついた実装”です。受付、会計、診療記録、検査、画像、紹介、処方、請求、同意、バックアップ、障害対応まで、医療機関の業務はつながっています。

電子カルテの標準化は、その接点を外部ともつなぎやすくする動きであって、院内の混乱を放置したまま入れれば解決するものではありません。だからこそ、いま必要なのは「どの製品を入れるか」より前に、自院はどこを標準化し、どこを残し、どこを改めるのかを見極めることです。

まとめ

2026年以降、標準型電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、HL7 FHIR、クラウド型電子カルテ、医療DXは、開業医、クリニック、病院、ベンダーのいずれにとっても避けて通れないキーワードになります。

F-Labelは、この変化を「制度対応の義務」としてだけではなく、情報連携しやすい医療機関へ移行するための現実的な設計課題として捉えるべきだと考えます。電子カルテの標準化は、将来の話ではありません。次の更新、次の導入、次の連携先追加の時点で、すでに始まっています。


引用・参考

  • 厚生労働省「電子カルテの普及について」2026年3月12日資料
  • 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」公式ページ
  • 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスについて」資料
  • 厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」関連資料ページ
  • 厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」資料
  • PMDA「HL7 FHIR 規格に基づく医療情報の医薬品等の安全対策への利活用」資料
  • 日本経済新聞 記事
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC21BZZ0R20C26A1000000/

免責事項

本記事は、2026年4月6日時点で公表されている官公庁・公的機関等の情報に基づいて作成しています。制度設計、仕様、認証方式、補助内容、運用開始時期は今後変更される可能性があります。

実際の電子カルテ導入、システム更改、医療DX対応、セキュリティ対応、電子カルテ情報共有サービス接続、電子処方箋対応の判断にあたっては、最新の厚生労働省・デジタル庁等の公表資料および各ベンダーの正式情報をご確認ください。

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